評価・研究
2021/04/19
過去、不安定な仕事と家族との不和という状況に苦しんでいて、友人の家に泊めてもらう日もあれば、時には公園で野宿をして過ごしている若者と出会いました。
「若者も住まいをなくす」という事実が社会にあること。それまで想像はしていても、ここまで現実味を帯びて私達の前にその問題が現れたとき、ただただ「なんとかできないか」と強く闇雲に感じたことを今でも覚えています。
2021年3月末、NPO法人等が「住まいを確保することが困難な人たちの自立を支援する」場合に、全国にある公営住宅の空き住戸を積極的に活用できるように省令が改正されました。(「公営住宅法第 45 条第1項の事業等を定める省令」(平成 8年厚生省・建設省令第1号)本件については全国の自治体に展開され、今後その活用が期待されています。
誤解のないように先にお伝えしておくと、この省令改正においてわたしたちハローライフが与えた影響はほんとうに微々たるものです。生活に不安を抱えるすべての人が住まいを確保することの重要性を説き、それについて「全世代型社会保障の基盤としてもらえないか」と予算委員会で力強く国に訴えた参議院議員の山本香苗さんを筆頭とした多くのみなさまのご尽力が大きな動きとなったこと、また感染症による未曾有の社会情勢が大きく影響しています。
2020年1月に、ハローライフが2017年から実施している「住宅つき就職支援プロジェクト MODEL HOUSE」に、公明党雇用・労働問題対策本部の山本香苗本部長と府議、市議のみなさまが視察に訪れてくださいました。プロジェクトの生まれた背景や、プロジェクトの現状、成果、課題に感じていること、「住まい」を巡ってどんなサポートが社会には必要なのか。様々な意見を交換させていただきました。
省令改正の知らせを受けたとき、今後住まいに困る全ての人が住まいを得ることができる機会が増えていくことに喜びを感じたのと同時に、現場の価値をつくってくれていたスタッフたちのこれまでの歩みが報われた想いがしました。
というのも、「住宅つき就職支援プロジェクト MODEL HOUSE」は、それを生み出すまでや事業を継続的に行っていくことにおいてとても苦悩してきました。冒頭の若者のように「仕事と住まいの確保に困っている」人が社会にはいる。なんとかできないかと構想が始まったものの、多くの管轄との連携はさまざまな調整事が膨大で、起こると想定されることへのリスクヘッジのための準備、多くの協力者を得ることに飛び回り、取り組みを現実にリリースするだけでも3年以上。事業をスタートしてからも、必要とする人にこの取組みの存在を知ってもらう難しさ、「自分らしく働き・暮らしていく」ことを一人ひとりの若者が実現していくための十分な就職サポートの在り方、企業の採用・人事課題を真に理解しこの取組みが課題解決のソリューションとして役割を果たすようにするための事業改善、一人でも多くの必要としている人に継続的に価値を届けるための事業継続性。
あげればキリがないほど課題は山積みで、「どこかでケリをつけて辞めてしまったほうがいいのではないか」という考えが頭をよぎったこともありました。
そんなとき、就職氷河期世代の方・コロナ禍により失業された方が就職と住宅のサポートを受けることができる事業のチャンスをいただき、令和2年度に「住宅付き就職支援 チャン巣プロジェクト」を実施することができました。「ずっとここに住み続ける」ということは、事業の性質上今回は叶いませんでしたが、この事業に参加することで再スタートを切り、生活基盤を築き、たくさんの人との関わりの中で就職決定・自分自身の成長・社会的自立を果たし、ここから「いつか巣立っていく、その日まで。」伴走する。という想いを込めました。
社会との関わりの中で、否定をされたり、受け入れられなかったり、ときには切り捨てられたりする中で、社会が怖い、人が怖いと思っている人がたくさんいます。それが働くことへの自信、自分らしく暮らしていくことへの自信を吸い取ってしまう。
チャン巣プロジェクトを担当するスタッフは、「あなたたちはどうしてこのプロジェクトをしてるんですか?」とプロジェクトに応募してきた方から聞かれることが多かったと言います。たぶんその言葉の奥には、「なにで儲けているのだろう」「所詮仕事だからやってるだけだろう」という、ハローライフの「打算」を確認したかった意図があったように思います。でも、ただただ「困っている誰かの役に立ちたい」「誰かのためになにかできる事業のチャンスを掴みたい」そんなスタッフたちの想いが、現場でともに時間を過ごす中で伝わりだしたとき、プロジェクトの参加者の心が少しずつ開いていき、暮らしや仕事に必要なパワーや自信を取り戻しつつある状態に向かっていったように思います。
住宅付きで就職支援をおこなうこの取組みには、大阪府をはじめ日本財団、村上財団、トヨタ財団、四條畷市、地域住民の皆様、各参画企業、有識者の先生方、クリエイターの方々など、数百人を超える協力者の方々がいて、全員の力が合わさりここまでこれたと実感しています。就職が決まった参加者の笑顔、巣立っていく背中、「これからなんぼでもやれますよ。」と企業担当者が参加者にかけた声、地域の賑わい、省令改正。わたしたちが見たかったこんな風景は、チームで嵐を乗り超えてきた先にしか見ることができなかった絶景のひとつです。いつかはなくなったほうがいいこんな仕事に取り組め、やれるチャンスと環境をいただけて、心からありがたいと感じます。私達はこれからも、困っている誰かのためになる本質的学び、行動、提言を続けていきたいと思います。
改正された省令の内容が、各都道府県で困っている人のために実際に活用されていくかどうかは、またこれからの新しい挑戦です。わたしたちと同じように「困っている誰かのためになにかしたい」という想いで活動されているNPO等の皆様・自治体の皆様もぜひ、「住宅」という切り口でできる取組みをご検討いただければ嬉しいです。今目の前にいるあの人を、まだ出会っていない誰かを、まだまだ思いっきり笑わせてやりましょう。
まとまりのない文になってしまいました。
省令改正を知ってもらい活用してほしいこと。
壮大な取り組みを担う私たちの想いのこと。
たくさんの方々への感謝の気持ち。
そんなことを伝えたく、ニュース記事を発信しました。
今日も大阪で、一人でも多くの人が自分らしい働き方・生き方を実現できる社会をつくるために、わたしたちハローライフは元気に前へ進んでいきます。
佐藤幸子
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