就業システム・組織戦略開発サービス
期間:2017.3.29〜現在
テーマ:若者就業支援、空き室有効活用、地域活性化
パートナー:大阪府・公益財団法人日本財団(2017〜2019)、四條畷市(2019)
不安定な就業状態を繰り返している15〜概ね39歳までの若者を対象に、大阪府四條畷市「府営清滝住宅」の空室を提供し、就職・住宅・コミュニティの3つのサポートプログラムを実施しています。就職による収入の増加に加え、生活コストを下げるという視点からも若者の自立を促進しています。
厳しい雇用情勢の中、ワーキングプア状態など、不安定な就業状況を繰り返している若者は数多く存在しています。大阪府内の若者の概ね4人に1人が非正規雇用(約37万人)であり(※1)、また、正社員の平均年収が487万円なのに対し、非正規雇用の平均年収は約172万円と正社員の半分以下の金額が調査で明らかになっています(※2)。これらのことが要因となり、非正規雇用の若者は、「十分な収入が得られず、将来に希望を見出しにくい」「経済的な事情により、親元から離れることができない」「家賃が払えず、安心して暮らせる住まいがない」など、自立した生活を送ることが難しい状況となっています。
そこで、住宅つき就職支援プロジェクトMODEL HOUSEでは、就職サポートに加えて、公営住宅の空き室を提供する住宅サポートと、仲間や地域との共同活動を促進するコミュニティサポートの3つのプログラムを提供し、若者の人生を応援することに取り組みました。公営住宅は単身の若者や中高年層の入居が一般的でないとされてきたため、「公営住宅の目的外使用承認」、「行政財産の使用許可」を得て、構想からおよそ3年でようやく実現することができました。就業支援だけでなく、公営住宅の新たな活用方法としてもモデルを構築しています。
(※1)出典:平成24年「就業構造基本調査結果」(総務省統計局)
(※2)出典:平成28年「民間給与実態統計調査」(国税庁)
JR四条畷駅よりバスで約11分。昭和46年に建設されたレトロな雰囲気の漂う公営住宅です。見晴らしの良い場所に位置しており、ベランダからの景色がとても魅力的です。住人の半数以上を高齢者が占めており、地域活動の衰退が深刻化しています。本事業は、団地に若者や就職氷河期世代が入居して自治会活動等に参加することで、コミュニティの活性化も図ります。
建築年度:昭和45年
団地総戸数:690戸
プロジェクト参加者それぞれが希望する企業へ応募し、就職決定していくことをサポートするプログラム。NPO法人HELLOlifeが運営する就職支援拠点「ハローライフ」だけでなく、大阪府の「OSAKAしごとフィールド(OSF)」、厚生労働省「大阪府地域若者サポートステーション(サポステ)」と連携し、実施しました。
四條畷市にある大阪府営「清滝住宅」の空室を住宅として提供し、住まいをサポートするプログラム。プライベートな空間である居室スペースと、共有利用の家電・家具が備え付けてあるコミュニティスペースを提供しました。居住スペースは自分の手で部屋を改修・リノベーションし、参加者同士やスタッフとの協働作業・体験によって信頼関係の構築やプロジェクトへのモチベーション向上へつなげました。
自治会活動(清掃活動や行事)への参加や、地域住民・参加者同士の交流を促進するプログラムです。参加者は、自治会活動を通じて社会参加の機会を得たり、職業能力を習得します。また参加者が共同で利用するコミュニティスペースでは、スタッフが就活や生活の相談に応じたり、参加者同士が交流を深められるようなプログラムを実施しています。
本プロジェクトは、3年間に亘って少しずつ事業のスキームを変化させてきました。2017年・2018年は、前例のない事業の形を作り出すことに注力しました。2019年度は事業を他地域へ展開することを念頭に、民間企業および地元自治体との連携を強化しました。
・公益財団法人 日本財団からの助成を受け、大阪府・公益財団法人日本財団・NPO法人HELLOlifeの三者で協定を締結。
・四條畷市にある大阪府営清滝住宅の空室をリノベーションし、非正規雇用や不安定な就業状況にある若者(15歳~概ね39歳まで)に無償で提供しました。
・家賃等にかかる生活コストを削減し、低所得でも希望を持って働ける状態をつくることを目指しました。初年度は全部で11戸(10戸は居室/1戸はコミュニティスペース)を活用しました。
・事業を継続実施し、翌年度以降の展開(同地域での拡大展開)を踏まえて事業整備しました。
・日本財団からの助成が終了した後も事業を継続できるよう、生み出した価値を振り返ると共に、自走できる事業の形を模索しました。
若者支援施策イノベーション委員会は、本事業と同様に2017年度の日本財団の助成事業の枠組みで実施した取り組みです。若者支援等の専門性と実績をもつ有識者の方や、若者支援と従来交わることのなかったITやクリエイティブ分野の技術を持つスペシャリスト集団で結成した委員会です。2017年度の若者支援施策イノベーション委員会では、公営住宅を活用した若者支援事業についての可能性や効果について、ディスカッションをおこないました。
など約40媒体
・事業戸数を11戸から30戸へ拡大(28戸は居室/2戸はコミュニティスペースとして活用)し、さらなる広がりを目指しました。
・サステナブルな事業の推進に向けて、受益者(入居者や入居者の雇用受け入れ先となる企業)が負担する官民連携型の事業モデルの構築を目指しました。
2019年度から本プロジェクトでは四條畷市を中心とした地元企業に参画していただき、その参画企業とプロジェクト参加希望者の正規雇用でのマッチングを進める「企業参画モデル」で事業を推進。2019年6月と10月に企業交流会を実施し、参画企業へのマッチングをはかりました。
■ プロジェクト参加希望者とマッチング数
プロジェクト経由でマッチングした入居者に向けて月に一度の「定着研修」を実施しました。入居者同士の関係性を深めること、また「新たな環境のなかで、自ら動き・成長する力を育むこと」を目的として研修プログラムを構築しました。定着研修の様子は毎月企業への報告も行いました。
また毎月1回ハローライフのコーディネーターが企業へ訪問して、企業・若者・ハローライフの三者で振り返り面談を実施しました。合同研修で作成した目標設計シートをもとに、毎月の目標設定・振り返りを行いました。
2019年度事業は参画企業への正規雇用へのマッチングを大前提に事業を推進してきましたが、2017-2018年度にサポートしていたさまざまなバックグラウンドをもつ若者も対象者として支援するために、アルバイトから正規雇用へステップアップする「ユースサポートコース」を2019年度の後半で新設しました。OSAKAしごとフィールドや大阪府地域若者サポートステーションとの連携を進めながら、入居者のサポートを行いました。
特定非営利活動法人モクチン企画と共同で新たなDIYキットを開発しました。費用や工数を抑え、かつ部屋のデザイン性を高めるために、新たに壁紙による施工を取り入れたのが特徴です。これによって、一部屋あたりの改修費を大幅に抑えることが出来ました。
プロジェクトをより多くの対象者に周知するための広報活動に注力をしました。各報道機関へのプレスリリースの配信だけでなく、YouTubeなどを使った動画でのPR活動にも挑戦しました。
■ メディア掲載
・読売新聞 ・朝日新聞 ・大阪日日新聞 ・ケーブルテレビJ:COM(2回)
・読売テレビ かんさい情報ネットten. | 読売テレビ ・ニュースイッチ Newswitch by 日刊工業新聞社
・YouTube『四條畷市公式動画チャンネル「なわてほっとムービー」』
・イケダハヤト氏ブログ記事&Youtube動画配信 ・シェアクリップ(web)・物件ファン(web)
■ WEBサイト
Webサイトも新規作成し、これまでとは違った層にリーチするよう工夫をおこないました。
2017年〜2018年度は、大阪府・日本財団・NPO法人HELLOlifeの三者協定のもと事業を実施。モデル事業として、全11戸の空き室をリノベーションし活用しました。日本財団からの助成金を活用し、事業参加者からの費用は徴収せず、無償で住宅を提供しました。
2019年度は、大阪府・日本財団・NPO法人HELLOlifeに加えて、事業実施地域である四條畷市にも協定参画をいただきました。四條畷市との連携により、地元企業参画型の事業モデルに移行。サステナブルな事業運営ができるよう、参画企業や入居者等の受益者から費用を徴収しての運営を試みました。
全国で初めて、公営住宅の空き室を活用し、就業支援につなげるモデルを実現できました。 雇用と住宅という異なる部局を横断した事業づくりに挑戦し、多様なステークホルダーと共に事業を展開できました。
大阪府・四條畷市・公益財団法人日本財団・NPO法人HELLOlife(大阪府地域若者サポートステーション受託事業者)の四者が協定を結ぶことで、行政財産の目的外使用許可の取得ができました。
大阪府内で、2つの部署(雇用担当部署・公営住宅管理担当部署)を横断したプロジェクトが実施できました。
取り組みの先進性から、新聞やテレビ等、メディア露出の機会を多く得ることができました。またその結果、全国の市町村から視察が相次ぎ、事業のポテンシャルを感じてもらうことができました。このことは、若者が抱える自立にむけた課題と、老朽化した団地における課題について社会全体の関心を喚起し、地域が抱える課題を可視化することに繋がりました。
2017年度~2018年度にかけてのモデルでは12名の若者が本事業を利用し、引きこもり経験・家庭環境における課題など幅広いニーズを持つ若者を受け入れることができました。2019年度からのモデルでは、7名の若者が地元企業への就職と清滝団地への入居を果たしました。これによって、参加者の個人の成長や自立を促すことができました。
2017年から始まった本プロジェクトは、プロジェクトの形を少しずつ変化させながら現在も継続して事業を実施することができています。2020年度には、就職氷河期世代の方とコロナ禍により失業され住宅の確保が困難な方に向けて、住宅の提供と就職・定着のサポートが一体となった『住宅つき就職支援「チャン巣プロジェクト」』を実施しています。
2021年3月末、NPO法人等が「住まいを確保することが困難な人たちの自立を支援する」場合に、全国にある公営住宅の空き住戸を積極的に活用できるように省令が改正されました。(「公営住宅法第 45 条第1項の事業等を定める省令」(平成 8年厚生省・建設省令第1号)本件については全国の自治体に展開され、今後その活用が期待されています。
HELLOlifeが取り組んできた住宅付き就職支援事業が、今回の公営住宅法の省令改正与えた影響は微々たるものではありますが、構想から実施に至るまで、3年以上の歳月をかけて取り組んだ事業が省令改正に結びついたことは、私たちにとっても感慨深い出来事でした。
・2019年都市住宅学会賞業績賞 都市住宅学会長賞
本事業での取り組みを経て、当法人は大阪府より居住支援法人(※1)の指定を受けることができました。大阪府内の平成25年の空き家数は、67.9万戸(空き家率14.8%)にのぼり、平成20年に比べ、5.4万戸増加しています(※2)。空き家の増加が進む中、これらの物件の有効的な活用方法が求められています。今後は、公営住宅の活用だけでなく、民間の空き家を活用した就業支援プログラムの構築を推進します。
2018年2月〜現在は、国土交通省のサポートを受けながら同法人が企画・運営する就業支援施設「ハローライフ(大阪市西区)」で、一人暮らしにまつわる相談サービスや計画作りをサポートし、ハローライフが連携する不動産会社からの住居紹介の紹介が受けられる「人生によりそう住まい探し HELLOlifeHOME」のサービスも実施しました。
(※1)居住支援法人とは…大阪府において、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する支援事業を実施する法人の中で、大阪府知事より住宅確保要配慮者居住支援法人と認定を受けた法人のことを言います。
(※2)出典:平成25年「住宅・土地統計調査(確報集計)」(総務省統計局)