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就業システム・組織戦略開発サービス

The Work – Music Project –

期間:2014〜現在

テーマ:オーケストラの新たな芸術価値創造、若者就労支援

クライアント:日本センチュリー交響楽団

http://the-work.jp/

概要

日本センチュリー交響楽団と取り組む音楽創作を通じた就労支援プログラムです。音楽づくりを通じてコミュニケーションや表現などを身につける「音楽創作ワークショップ」と、働き方や就労につながる「ハローライフワークショップ」を交互に実施。(※実施年度によって異なります)

若者の潜在的な能力の発掘・向上を狙いとし、参加者である若者は、「仲間」として出会う楽団員との自然な触れ合いや、音の出るものすべてが楽器と捉える自由な音楽創作などを通じて、日々の暮らしや働き方につながる創造性や社会性を獲得。本プロジェクトは、社会における就労支援の方法やあり方の新たなモデルとなることを目指します。

背景

国の第3次基本方針に「教育、福祉、まちづくり、観光、産業等周辺領域への波及効果」「コミュニケーション教育」「社会的便益を有する公共財であり社会包摂の機能をもつ」と明記され、また大阪府市文化振興会議においても「「芸術のための芸術」から「社会のための芸術」へのシフトという潮流の中、芸術家・芸術団体は持てる能力・ノウハウを福祉・医療・教育・まちづくり・観光などの他分野に活かすことが求められている。」と提案されているように、社会全体からのオーケストラへの要求は多様化しています。

オーケストラの社会的存在意義

日本センチュリー交響楽団は社会の一員としてのオーケストラとして活動していくにあたり、社会のあらゆる層へ音楽を提供したい。また、あらゆる層から求められ、コンサートの提供だけにとどまらないオーケストラになるため日本センチュリー交響楽団自らがその方法を創造し、パイオニアとなり、社会全体へ提案したい。

芸術的な挑戦

オーケストラは過去の偉大な作曲家が残した作品を高いレベルで再現することが活動の中心であり、音楽の供給側と需要側に行きすぎた細分化が起こっているように見える。同じ時代を生きる人々とともに創作活動をすることで、芸術団体としての「創造性」を高め、真の意味でのコンテンポラリー音楽を生み出したい。これは現在と未来の音楽界に対しての義務でもある。3期目である2016年度は、ボーンマス交響楽団によるプロジェクト「Geo opera」の一環として、イギリスの若者と共に、言語・国境を越えた音楽創作に取り組んだ。

3楽団員の才能の活用と育成

専門的な教育を受け、芸術的に高い技術を持つオーケストラの楽団員をコンサートホールに閉じ込めておくのではなく、その才能・能力を上記のように様々な分野で活かすともに、楽団員も多くの人と触れ合い、その才能を発揮することで音楽家として大きく成長することを目指したい。

オーケストラへの支援獲得

上記のようにオーケストラへの社会的要求が高まると同時に、オーケストラへの支援への考え方も複雑化している。例えばホームレス社会復帰支援と富士山の環境保全とオーケストラ支援のうち、どれに寄付することが重要か?という風に見られていると考えるべき。多くの分野で活動し、影響をあたえる楽団になることが不可欠である。

マーケティング、新しいビジネスモデルの模索

オーケストラは人口の約2%と言われるクラシック音楽の顧客をどのように奪い合うかという努力を続けているようにも見える。また2%の顧客を3%、4%に増やすにはどのようにするべきかに日夜知恵を絞っている。オーケストラに触れる全ての人を顧客と考え、人口の2%ではなく残りの98%にどのようにオーケストラを売り込むかという考え方をすれば、新しいマーケティングやビジネスモデルが生まれる。そのためにはコンサート以外のオーケストラの商品が必要であり、コミュニティ/教育プログラムをそのラインナップに加えたい。

成果

2014年度

ひとつの音楽作品をつくりあげる過程を通じて、自身の就労や暮らしに必要な社会人基礎力を身につける体験型プログラムを提案・実施しました。最終日の7月6日には大阪駅南ゲート広場での発表イベントを開催し、大盛況となりました。
就労面での効果は、参加者のうち数名が就労に至る予想以上の結果が出ました。 参加者の社会的機能尺度 SOFAS(※)の平均値は、本プログラムに参加前と 後で比べると、65.9 から 76.8 へと変化しました。特に、参加の前後で 数値が上昇したメンバーに関しては、採用、外部との交流、社会的活動への参 加などへの変化が見られました。個別相談で十分な効果が出なかった若者が、プロジェクトで自分の居場所や空気を見出し、プログラムの1回目で意識が変わったケースもありました。
・楽団員参加者数:6名(発表会参加6名)
・若者参加者数:10名(発表会参加9名)

(※)SOFAS(Social and Occupational Functioning Assessment Scale) は、精神症状を除く社会的機能、職業的機能全般のみを1~80の数値で表すもので、通学や就労している若者の多くは80以上を示し、ひきこもりや不登校の場合は 50 未満と評価される。

2015年度

プログラム前後の意識の変化は、大学 4 回生や既卒者が中心であった 2 年目の参加者の方が小さいが、その一方で、「The Work」とは自分たちにとって何なのか、本人たちが問いかけるようになった成果がみられました。また、音楽創作プログラムにおいて、音楽で伝える表現とは何なのか考えることや、楽 器でないものを楽器として活用する経験などから、当たり前を当たり前でないと認識するという、思考の転換につながる可能性が感じられました。
・楽団員参加者数:8名(発表会参加6名)
・若者参加者数:18名(発表会参加6名)

2016年度

英国の作曲家ヒュー・ナンキヴィル氏が「ボーンマス交響楽団+英国の若者」 と取り組むプロジェクト【Geo Opera】と連携し、言語を越えた音楽による コミュニケーションを通じて2つの曲が完成。日本センチュリー交響楽団が 指定管理者として運営に関わるローズ文化ホールにて演奏しました。
・楽団員参加者数:6名(発表会参加6名)
・若者参加者数:13名(発表会参加10名)

2017年度

約4ヶ月間のワークショップを通じて創り上げた音楽を、作曲家の野村誠さんが楽譜へと変換し、日本センチュリー交響楽団首席チェロ奏者・北口大輔さんがコンサートで演奏。
昨年度までは、参加者自身が演奏家となり発表するというスタイルをとっていましたが、2017年度は作曲家や監督のようなポジションで、北口さんへ演奏指示をおこなうなど、これまでとは違ったプログラム内容に挑戦しました。

今後この作品が様々な機会で演奏され、参加した若者たちのメッセージやThe Workの取り組みが作品を通して広がるようにと、楽譜を一般公開しています。
http://the-work.jp/blog/news/miwamokiho_apupo_gun_kamane

・参加者数:15名(楽団員・若者含む)

さらに、これまでの取り組みが、世界のクラシック音楽界に新しい方向性や社会へのインパクトを持つ活動として「Classical:NEXT 2018 Innovation Award」にて評価され、ノミネートされました。

2018年度

大阪府四條畷市「府営清滝住宅(清滝団地)」にて取り組む住宅つき就労支援プログラム「MODEL HOUSE」のコミュニティプログラムの一環として、団地に入居する若者や住民と共に、全7回の音楽プログラムを開催。音楽を通じて入居者同士の交流を深めながら「清滝団地の歌」を創作しました。

参加者がつくった歌詞には、清滝団地での暮らしで感じたことや地域の歴史などが盛り込まれており、団地の伝統行事である「盆踊り」でも踊れるような曲調・振り付けとなっています。

・参加者数:全50名程度

参加者の声

若者の声

・今まで触れてこなかった音楽を通じて、自分でもできるという「自信」をもつことができたので、ほかのことに対しても積極的に取り組めている。
・就活はひとりなので、どうしても辛いことについて、友人や家族に言う機会もそんなになくて…。それを音楽で発散したり、メンバーと話をして、明日から頑張ろうと思えた。
・今まで、なにをするにしても「観客側」だったけど、初めて「主人公」としてステージに立って、拍手をもらうことができた。それが本当に嬉しかった。

楽団員の声

・参加者の成長が嬉しく、自分たちの仕事や生活に対しても刺激になっている。
・プログラム以外の場でも「一方的」ではなく「一緒に創る」スタンスに変わった。
・答えを示すのではなく、参加者は「どう考えるか?」が大切だと気づいた。